野球選手のクラウドファンディング。

私は日本で野球を始め、高校在学中にはアメリカに渡ってそれまでに知ることがなかった野球の価値観を学び、それから曲がりなりにも国内外のプロ野球でプレーしました。

海外で野球をするには本当に色々なプロセスを踏まなくてはならず、それはもう膨大な数のTo Doがありました。言葉も違えば文化も違う場所。学生時代、寝る間も惜しんでただただバットを振り続けた先に光があると信じていた私にとっては全てが試行錯誤でした。

当然の事ながら、スマホもなくてインターネットもいまほど便利に使うこともできない時代に、私のような当時17歳の野球しかしてこなかった学生がアメリカから日本の家族に電話するにも、ガソリンスタンドのコンビニで10ドルの電話カードを購入し、そこに書かれた番号を公衆電話に叩いて話せる時間はたったの数分。航空券も今よりも便利に買えない頃に、海を渡るというそれはもう一大決心でした。

なぜ今、アメリカに初めて渡った頃の話を振り返るかというと、このようなページを見つけました。

 

夢は絶対あきらめない。メジャーリーグに挑戦!
(谷田成吾)

 

読んでみていかがでしょうか?

では、私の後輩で7年間アメリカでしがみついている安田裕希選手のこちらのページはどうでしょうか?

 

新しい野球選手として生きる
(安田裕希
)

 

内容と金額を比較してもらいたいと思います。これが今の日本の野球界の現状です。安田選手はこの集まった資金でビザ取得にこぎつけ、この1シーズンをクビになることなくプレーし続けることができました。その間、いい時も悪い時もサポーターページを更新し、支援してもらったサポーター(支援者)に逐一報告をし、リターンもしっかりと「責任」を持って実行していました。

プロ野球とは言え、独立リーグでは給料は安く、それだけで生計を立てていくには困難です。だからこそオフシーズンには仕事をしながら、シーズン中は職場にも理解を得ながら野球を続けていきます。私自身も現役をしている事はいくつかの仕事を掛け持ちながら昼夜昼の仕事を繰り返し、2日寝ないことも珍しくなく、それがオフシーズンの当たり前の日々でした。自分のキャリアを上げていくために練習やトレーニングも同時進行で行います。こんなことを理解してほしいわけではなく、自分が持った目標に向かっていくための作業でしかないので当然の事です。それが学生野球を終えた後の底辺と言われる野球界の実情です。

そんな底辺と言われる世界を渡り歩いてきた私の経験からすると、この谷田選手の挑戦には残念に感じてなりません。高学歴と言われる慶應大学で学び、当然自分が飛び込んでいく世界のことをあらかじめリサーチをして対策を打っていた(はず?)と思いますが、たどり着いた先は国内独立リーグの一つである徳島インディゴソックス。そもそもこのクラウドファンディングページの文章はお涙頂戴メンタルが全面に出ていて、異国で事を成し遂げる人間の言葉ではないと私は読み取りました。諦めない男の言葉ではない。そして、たくさんのサポーターの方から集まった約230万円という大金と後押しがあれば私の経験上まだまだいくらでもしがみついてアメリカで自分の居場所を見つけることができるはずです。しかも日本アマチュア球界の中でこれだけのエリートコースを歩んできた選手であればできないはずがない。私のような名もない野球選手ですらしがみつくことができたのだから。

無名の私がアメリカにしがみつくためにシカゴでの1Dayトライアウトをネットで見つけて飛行機代と宿泊代にアルバイト代を注ぎ込むこともあれば、アポなしで球場まで行き、勝手にグラウンドに入って勝手に練習に参加したり、お金がなくてその日に会った人とルームシェアをしたり、宿も取れずにバス停や空港で寝たこともありました。インスタントラーメンを2週間食べ続けたり、あり得ないほどの大きなサイズの具がないおにぎりを握って、それで数日食いつないだこともありました。それでもなんとか這い上がってやると歯を食いしばってその瞬間を生きたものでした。その経験も今となっては貴重な財産です。

アメリカでやると言うからには、アメリカにいなくては何も起きません。スカウトが日本までお越しいただいて獲得してくれるような選手であれば挑戦する必要もない。そのポテンシャルがあればすでに日本のプロ野球のどこかに入団していると思います。そうでない選手はみな一緒でボーダーラインの選手です。

これだけのたくさんのお金は挑戦し続けるための支援者(投資家)の想いだと思いますし、クラウンドファンディングというプラットフォームの上でそのお願いをするのであれば、そこには報告義務、リターン、そしてなによりも責任が生じると思います。このクラウドページの最大投資額5万円のリターンには直筆のお手紙。。。

まだまだしがみつく方法があった中で、安田選手もアメリカでもがき続きていますし、私がアメリカで出会った先輩方もアメリカのグラウンドに立つために倒れては起き、倒れては起きを繰り返しながら志高く挑まれていました。今なお、私の周りには歯を食いしばって這い上がろうと挑戦し続ける仲間もいます。

こんな短期間で何もまだ手を尽くしていない段階で諦めることは残念に思いますし、この程度で挑戦だと言ってほしくない。日本球界で名もない選手達が何度も否定されながらも挑み続けるのだから。

これはツイッターで見つけた彼が綴ったであろう全文です。

 

支援者へのメッセージ

 

直接受け取ったメッセージではないので断言はできませんが、社会人野球でズバ抜けた活躍を見せていない選手が、言葉もできない、アメリカの野球(グラウンドの質、異なる規格のボール、日本では体験できない球筋など)もわかっていない、そういった選手がアメリカでマイナー契約を目指してダメなら帰りますではリサーチが浅すぎる。これが【覚悟】を持った行動であるのか疑問です。

また、クラウドファンディングは今の時代らしい有効なプラットフォームだと思います。まだ世に出ていないアイテム期待する者が投資をして賛同することで資金的なハードルをクリアできたりや、今回のようなチャレンジに対して応援する者が想いを込めて投資をする。素晴らしいマッチングシステムだと思います。ですが、形にない商品はとても難しい。だからこそきちんと経過を報告することで支援してもらう側の責任感がとても重要なポイントだと思います。

こんな中途半端なチャレンジで落胆する人が増えて、今後本当に志を持った選手がクラウドファンディングを利用する時にこの例を引っ張り出されて、今後の選手の可能性を狭めてしまうのはとても心苦しい。ただのお金集め目的だろうという視点がつきまとうからこそ、彼にももっとしがみついてまず本当の意味でアメリカのグラウンドに立つ権利を勝ち取るまで戦ってほしかったと思います。

 

 

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コソッと。

現役の時にこんな場所があったら本当によかったな~と。

プレーできるチームがなくて、一人で練習してた頃は小学生の時に所属していた「大和田タイガース」のグラウンドを使わせてくれていて、アルバイトが終わればすぐにグラウンドに向かって練習してた。

暗くなればボールが見えなくなるから、時間も限られていて、ネットスローや置きティーもわずかな時間しかできずにフィジカルトレーニング中心に。

グラウンドも最近では少なくなっているような気もするし、練習場所に困る人もきっと少なくないと思います。今はレッスンで使っているこの練習場も、コソッと練習できるコソ練スペースとして貸し出ししていけるようにしたいなと思っています。

 

 

 

思いっきり打っても、投げても大丈夫。

 

 

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<体験レッスンはこちらからどうぞ>
https://takubokenshoku.com/lessons/

<田久保賢植の経歴は以下のリンクから確認下さい>
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/田久保賢植

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限界を決める者。

これまで見てきた様々な国の様々な選手達。

伸び悩む選手の共通のメンタリティーのひとつがタイトルにもありますが「限界を自分で決める者」です。

プロになるだけの身体的なポテンシャルのある選手であれば、ある程度普通にこの国で野球をしていたらそのままプロに選ばれるのがこの国の普通です。眠ったポテンシャルを見出すことよりも、評判やわかりやすく言えば150キロ投げることができるとか、そういうものでドラフトされるのが現状です。

つまり、高校や大学からそのままドラフトされていない選手は、ほぼ同類だといえます。自分も現役時代はその部類でしたが、そういった選手が現状を打破して「向こう側」に行くためには何かを得ないといけません。そして何かを得るためには、やはり何かを捨てなくてはいけません。その何かはもちろんそれぞれで異なります。もっと言えばその何かが何なのか把握することも実力のうちといえます。

私は生き方と野球選手としての能力は共通すると考えています。ある真面目でリズム感のない選手にこういうアドバイスをしたことがあります。「クラブに通ってみたら?」と。

私がカナダにいた頃に共に過ごした中南米の選手達は、食事中でも歌うこともありましたし、TVから流れてくる音楽のリズムに合わせて、踊り出すこともありました。お行儀の話は置いておいて、彼らにはしっかりとビートが刻まれています。それは守備中のボールまでのアプローチや、打席の中でのタイミングの取り方、あらゆる部分にそのビートがプラスに働いているように思います。だから単純にその選手にはクラブに通ってリズム感を養うのも、伸び悩んでいる彼が現状打破するためには必要なことだと思ったからそういうアドバイスをしました。

ですが、あまりに彼の中では想像できないアドバイスだった為か、「自分はそういうのはあまり・・・」という答えでした。

自分の枠を超えられなければ、成長はありません。新しい挑戦の先にはいつも新しい景色が待っていて、同じ景色も違って見えます。その違いに心が震え、またその先の景色も見てみたいと思う過程で成長していくんだと思います。

自分を評価するのはいつだって自分ではなく、他人です。プロ野球選手になりたいと懇願しても、決めるのは他人です。だったらひたすら今と過去の自分と決別しながら成長するしかありません。

高い目標を持つ者には、限界は自分で決めないでほしいと思います。

 

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