侍ジャパンと戦った日。

WBC東京プールの中でも、私にとって最も特別だった試合。

それが侍ジャパンとの一戦でした。

2012年、チェコで初めてプレーしてから14年。

まさか自分がチェコ代表のベンチに入り、WBCという世界最高峰の舞台で日本代表と戦う日が来るとは、当時は想像もしていませんでした。

試合前、東京ドームで日本の国歌を聞きながら、こんな不思議な感情を抱いているのは自分だけだろうと思っていました。

日本国民の多くが日本代表を応援している中で、私はチェコ代表の一員として日本代表に挑んでいく。

日本人でありながら対戦国のベンチに座り、本気で日本を倒しにいく。

この感情は、自分でも言葉ではうまく表現できません。

ただ一つ言えるのは、その日は「歴史を変えてやる」という強い気持ちで試合に臨んでいたということです。

試合が始まると、日本ベンチからの声はフェンスを伝ってこちらにも聞こえてきました。

私はチェコチームの中でも日本の野球を理解している立場だったこともあり、試合の流れや日本ベンチの雰囲気、次に何を考えているのかを自然と感じ取ることができました。

もちろん、すべてが思い通りに読めるわけではありません。

それでも、日本野球の考え方や傾向を理解しているからこそ、「次はこういう展開になるかもしれない」という感覚を持ちながらベンチに座っていました。

今でも鮮明に覚えている場面があります。

8回、一死から迎えた若月健矢選手の打席です。

私たちコーチングスタッフは、試合前から日本代表の打者一人ひとりについて映像やデータを分析し、特徴や傾向を共有していました。

若月選手についても、シーズン中や2月以降の代表活動での打席を確認する中で、右方向への打球が多い傾向を把握していました。コバラ投手との相性も踏まえると、あの場面でヒッティングになれば、ライト方向へ運ばれる可能性は十分に警戒していました。

だからこそ、チェコとしては送りバントを確実に決めてもらい、二死二塁という形で次の打者と勝負する方が有利だと考えていました。

その瞬間、私は本人に聞こえるように、思わず日本語で叫んでいました。

「バントでいいぞ!しっかり決めろよ!」

チェコベンチの選手やスタッフは、「ケニーが何か日本語で叫んでいる」という雰囲気だったと思います。

でも、その時の私にはそんなことを気にしている余裕はありませんでした。

チェコ代表の一員として、本気で勝ちたかった。

だからこそ、日本代表の選手に向かって日本語で送りバントを勧めるという、自分でも不思議な状況になっていました。

結果的に若月選手は送りバントを決めることができず、2ストライクからヒッティングを選択しました。

そして打球はライト線へ。

試合前の練習では、私が内野手へのノックを担当していました。

ちょうど東京ドームでは約7年ぶりに人工芝が全面刷新されたばかりで、実際にノックを打ちながら感じたのは、以前よりも打球の勢いが吸収されるような感覚でした。強く打った打球でも思った以上に勢いが弱まり、内野手の前で失速するケースも少なくありませんでした。

そのため、試合前から内野手とは打球の伸び方や処理について繰り返し確認し、こうした特徴を共有しながら準備を進めていました。

若月選手の打球の後、ライトからカットマンへ返球されたボールはショートバウンドとなり、私にはそのバウンドが手前でわずかに変化したように見えました。また、カットマンに入っていたヴァブラも、次のプレーを意識するあまり、ほんのわずかに目線が切れるのが早くなったように感じました。

もちろん、一つのプレーだけで勝敗が決まるほど野球は単純ではありません。

しかし、試合前から想定し、選手たちと共有していた様々な要素が、あの一瞬に重なったように感じたことは、今でも鮮明に記憶に残っています。

試合終了後、私の中には何とも言えない感情が残りました。

日本の野球を理解している立場だからこそ、日本代表の素晴らしさも知っています。

その一方で、その日はチェコ代表の一員として、本気で日本に勝ちたいと思っていました。

だから、日本代表が勝利しても、その輪の中に自分はいません。

勝利を仲間と分かち合うことができなかった悔しさ。

そして、「もっと自分にできることがあったのではないか」という思い。

あの日の東京ドームは、私にとって喜びよりも悔しさの方が大きく残る一日になりました。

それでも、この経験は間違いなく自分の野球人生における大きな財産です。

最後になりますが、日本代表の皆様、素晴らしい試合をありがとうございました。

世界最高峰の舞台で、本気で勝負できたことを心から光栄に思います。

そして、日本のファンの皆様にも感謝しています。

日本代表への大きな声援はもちろんのこと、チェコ代表にも温かい拍手や声援を送ってくださったことは、選手やスタッフにとっても大きな力になりました。

スポーツには勝敗があります。

しかし、それ以上に、お互いをリスペクトし合いながら真剣勝負ができることこそ、この大会の素晴らしさだと私は思っています。

2012年にチェコでプレーしたことから始まった縁が、14年後、チェコ代表のインフィールドコーチとして日本代表と戦うという未来につながりました。

人生は本当に何が起こるか分かりません。

だからこそ、この悔しさも、この経験も、すべてを次につなげていきたいと思います。

 

 

 

 

 

Thank you to Team Japan for a great game and for showing the highest level of baseball.

It was an honor to compete against my home country while proudly wearing the Czech uniform.

I also want to thank all the Japanese fans who supported not only Samurai Japan but also Team Czechia throughout the tournament.

The respect shown on and off the field is something I will never forget.

See you again.

 

 

 

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